今日、地方財政は厳しい財政事情の中で多くの問題を抱えています。この地方財政の問題は老朽化する公共施設、有料化される公共サービス、委託の増える公務などといった形で日常生活にも表れています。しかし、そうした問題を従来の財政指標で明らかにし、将来の財政運営に生かすことは容易ではありません。とくに、財政状況・経営環境が短期間に変化する今日では、探索的な分析手法が重要といえます。
　これに対して、私は数値データのみならず文書データをも用いた実証分析を研究しています。数値データにおいては、『財政状況資料集』、『経営比較分析表』のほか、新地方公会計制度に基づく財務書類も加わりました。これにより、従来の財政指標では把握の難しかったストックが指標化されました。また、財政指標と公会計指標を組み合わせて分析することの必要性も高まっています。
　一方、地方公共団体が公表してきた文書も有用です。とくに、上下水道事業、病院事業といった地方公営企業は事業ごとに高い専門性をもち、文書を分析することなくしてその経営状況を理解することは困難です。さらに、将来のAI社会を想定するならば、膨大なデータを扱うことは、単に財政の領域にとどまらず、情報分野の観点からも強く求められるでしょう。