多国籍企業の企業内・企業間の知識移転や知識共有のメカニズムに関する研究を行っています。企業内知識移転に関しては、日本の多国籍企業が海外子会社に暗黙知に分類されるような生産ノウハウを移転する際のメカニズムを、海外での現地調査に基づきながら探究してきました。この研究では、海外子会社に暗黙知を移転する際に、価値観の共有と信頼関係を補完的に機能させることが重要であると結論づけています。この研究は、『暗黙知の移転と多国籍企業-知識の国際移転を可能とする組織メカニズム-』（立教大学出版会）にまとめてあります。
　企業間の知識共有については、国内で強い紐帯と言える高いレベルの知識共有のネットワークを形成してきた日本企業が、海外のパートナーと高いレベルの知識共有を進めることができるのか、その可能性について研究しています。強い紐帯は、パートナー間での暗黙知の移転を容易にするなどのメリットがありますが、一方で新たなパートナーとの関係性構築が困難になるとも考えられています。こうした傾向は、日本の多国籍企業にも該当するものであるのか、あるいは国内での強固な関係性は、海外への関係性拡大を妨げるものとは言えず、むしろ促進するものと言えるのか、こうした点について実証的に明らかにすることを目標に研究を行っています。