私は大学院ではファイナンス分野の講義・研究指導を担当しています。ファイナンスという学術研究分野は、経済学の中にあって（主にマネーの観点からではありますが）最も広く深くリスクを取り扱ってきたといってよいと思います。もっとも、私自身はマネー中心の観点に飽き足らなくなり、最近は観光経済学やリージョナル・サイエンスの研究に関心を持っています。
　学術研究としての観光・地域研究は学際的な研究分野であるため、社会科学の範疇に収まりきらない多様なアプローチが可能です（誤解を恐れずに言えば、アプローチについては「何でもあり」という状況です）。しかし、リージョナル・サイエンスという研究領域を確立させた欧米と比べると、残念ながらわが国の観光・まちづくりに関する学術研究は、科学的・工学的・経済学的な分析が立ち遅れているように見受けられます。特に、観光という経済行動に及ぼす様々なリスクや不確実性の影響についての考察が希薄であったように思われます。
　経済行動としての観光に及ぼすリスクや不確実性の影響を理論的に考察し、そうした考察から観光政策や地域のまちづくり政策を導くためには、これまでに確立されてきたファイナンス理論が、なくてはならないきわめて有効な分析ツールになり得ると、私自身は考えています。
　ファイナンス理論の研究を志す学生はもちろん大歓迎ですが、観光経済学やリージョナル・サイエンスだけでなく、様々な学際的研究領域にファイナンス理論を応用することに関心のある大学院生も歓迎します。そうした意欲ある大学院生と、協力して一緒に研究したいと思います。