主に理論的な分析を行っています。
私が大学院に入った頃は、理論分析において、子どもの数は与えられたもの（外生）として、年金の意義が分析されておりました。その後、若年層がその世代の子どもの数を決めるであろうことが認識され、このことがモデル内で考慮され始めました。これにより、皮肉にも、年金制度の拡充が子どもの数を低下させてしまう要因であることが示されます。
　このような流れの中、私は、子どもの数は世帯によって異なること、あるいは、生む世帯、生まない世帯、様々な世帯が存在すること（皆さんが考えるであろう当たり前のことだとは思いますが）、このような世帯における多様性を考えながら、年金制度が存在する中で、子どもの数を増やすような政策が、それぞれの世帯にどのような影響を及ぼすかなどを理論的に分析し始めました。数値例を用いて、現実的な影響なども示しました。
　最近では、出生率がなかなか回復しない状況を考慮し、子どもを増やす政策ではなく、海外から労働者を受け入れる短期的な年金財政への影響も分析しています。この場合、労働者間において、代替関係があるのか、補完関係があるのか、この点がとても重要な影響を及ぼします。皆さんが考えているのは、代替関係ではないでしょうか。日本において、どのような関係があるのか、まだまだ分析を進めなければなりません。
　現状では、代替関係、補完関係、様々な状況を考慮したうえで、海外から労働者を受け入れる影響を分析しています。その際には、労働者を受け入れることによる失業率への影響や、その労働者が生むであろう子どもの追加的な教育負担など、受け入れに伴う追加的な負担を考慮したうえでの総合的な影響なども分析しています。
　年金財政への政策的な影響を分析する際の課題は、まだまだ山ほどあります。少しずつですが、地道に研究を続け、よりよい年金制度の構築に貢献できればと思っております。