私の研究分野は、外国に対する資産・負債残高の変化です。これは、専門用語で国際資本移動と呼ばれます。例えば、（1）豊かな国から貧しい国へどれくらいの資金が移動したのか、（2）その資金は貧しい国の経済成長をどれくらい促したのか、（3）外国に対する負債は返済可能な額にとどまっているか、などです。
　最近は、国際資本移動の決定要因として、人口変数に注目しています。例えば、平均寿命が上昇すると人々は老後のための貯蓄を増やしますが、国内で消化されない一部の貯蓄は資金が不足する別の国に貸出されるため、人々が長生きするようになると国際資本移動が影響を受けます。高齢化や少子化は世界中で観察されており、そのトレンドは長期的に続くことが確定的であるため、人口構造の変化は世界的な資金フローに強い影響を与えることが予想されます。私個人の研究成果として、中国に対するアメリカの赤字額が、中国の平均寿命の影響を受けていたことをデータ解析によって立証して、中国の長寿化が現在のトレンドで進めばアメリカの赤字額が縮小に転じることを示しました。
　研究を進める際には、理論と実証を出来るだけバランスさせることを意識しています。具体的には、考え方の基礎となる理論モデルを構築して、そこから得られた仮説の妥当性をデータによって実証的に検証するという方法をとっています。