「データ」の重要性に注目されるようになったのはいつの頃だろうか。情報通信白書（総務省）の特集テーマをたどってみると、「ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト（平成26年版）」、「ICTの過去・現在・未来（27年）」と続くが、「IoT・ビッグデータ・AI～ネットワークとデータが創造する新たな価値～（28年）」でようやく主なキーワードが出揃い、「データ主導経済と社会変革（29年）」では、「多種多様なデータの生成・収集・流通・分析・活用を徹底的に図る」と言及している。
　データを「徹底的に」活用するには、(1)コンピュータの操作技能や(2)統計分析の専門知識のみならず、(3)実際のデータそのものに対する理解が必要である。(1)(2)を学ぶ機会はそれぞれ十分に提供されているが、(3)については不十分であると認識している。IELTSアカデミック・ライティングTask1（グラフや表、図形を分析し、自分の言葉で客観的に説明する）に相当することを、日本語で体系的に教育されている様子はあまり見られない。
　以上を背景にして、総合的なデータ分析実習のためのe-learning開発を現在の研究テーマとしている。具体的には、公共データや白書・年次報告書などのオープンデータを素材として、基礎的なデータ分析を学ぶための例題データ集作成や、データの読解と言語化を学ぶための例文集作成に取り組んでいる。将来AIは人間の能力を超える、いや超えることはないという議論はあるが、データを通して社会を観察して、問題を発見し解決することは人間の役割であろう。