公企業と民間企業が競合する市場のことを混合市場(mixed market)と言います。交通市場における市バスと民営バス，医療市場における市民病院と開業医院，金融市場における政府系金融機関と民間金融機関の競合がこの具体例です。多くの場合，このような市場における供給者の数が限定されるため，混合寡占市場(mixed oligopolistic market)とも呼ばれます。また，海外に目を向ければ自動車産業や鉄鋼産業において，政府が企業の株式を保有している国もあり，広い意味ではこのようなケースも混合市場に入ります。
　政府がこのような形で市場に介入することにはメリットとデメリットがあります。寡占市場における過小供給を緩和することはメリットですが，よく知られるように政府系の企業は民間企業に比べて効率性で劣ることが少なからずあるため，それが結果として市場の効率性を歪めてしまう原因になるというデメリットもあります。
　以上のような問題意識から，1970年代に混合市場の分析が始まりました。そしてその後，公共経済学の分野だけでなく，産業組織論，国際経済学，都市経済学などの分野で応用され，数多くの研究が生み出されています。私はこの混合市場を題材にして，公企業を民営化したときの効果や，産業への規制や補助金の効果など，政府と経済の関わりについて研究しています。