南山大学 国際教養学部 Faculty of Global Liberal Studies

深めて!南山GLS 学生の活躍 GLS教員リレーエッセイ

第11回 GLS教員リレーエッセイ Angelina Volpe先生

2022.05.16

Tonalestate国際平和文化フォーラム

Angelina Volpe

 2000年にイタリアでTonalestate国際平和文化フォーラムが始まった(2020-2021はパンデミックのためオンラインによる開催)。善いものは自然に始まるのではない。1998年、私の恩師であるジョヴァンニ・リヴァ先生(2012年帰天)が元教え子である私たちに呼びかけた。「この世界では多くの人が戦争、飢饉、不正によって苦しめられているのに、あなた方は自分の楽しみのためだけに夏休みを過ごしてもいいのですか」と真剣に問いかけたのである。そこで私たちは先生と共により意味深い夏休みの計画を練った。しかしどのようにすればいいのか。まず様々な国で働く私たちの手探りの仕事が始まった。最も弱い立場に置かれている人々に献身する人、本物のジャーナリスト、若者を愛する真の教育者、真理を追究する哲学者らを探し、平和フォーラムへの無償講演と分かち合いを依頼するところからである。このようにパッソ・デル・トナーレ(イタリアアルプス山中)で、彼らの知恵や知識と経験を、参加者と共に分かち合う3日間のフォーラムを始めた。Tonalestateというネーミングは、Tonale(土地の名前)estate(イタリア語で夏)から生まれた。

 フォーラムの目的は明らかであった。人間は、言語、宗教、文化、思想、習慣を超えて、最終的に奥深いところで皆同じ人間性を持っているため、99%の相違点に集中するのではなく、残りの1%の共通点を優先すれば、互いに協力できるのである。そこから友情と兄弟愛に基づく関係の構築が可能になるのだ。

 毎年のTonalestateのテーマは、Centro Studi(スタディーセンター)が近年の出来事、世界(社会)状況、出版物などの情報を収集分析し、研究、議論して、今こそ考えるべきテーマを決める。それは文化的な仕事であり、世間的メンタリティーに流されず、人間としての中心軸に留まり、尊厳のある人生を送るために本質的な価値観を養う意味を持つ。これまでに、平和、経済、悪の問題、兄弟愛、政治、テクノロジー、マスメディア、ジェノサイド、AIなどの問題を取り上げた。Centro Studiは中・高・大学の教員やジャーナリストや知識人の20名から成り、Tonalestateと共にすべてボランティアで行われている。

 参加者は主に中・高・大学生であるが、誰でも参加可能な場です(すべての方にウェルカム!)。赤ん坊を抱く若い母親や90歳を超えた婦人が参加することがある。このフォーラムの意味深さは、パネリストの話を聞いたり、ワークショップに参加し、テーマに関する知識を深めると共に、苦しい歴史によって分裂したパレスチナとイスラエルの民族代表者が同じテーブルを囲んで話し合うことを目撃することにもある。

 私は2000年当初よりTonalestateに協力し、毎年この「奇跡」を目撃してきた。また、開催のための多額な資金やエネルギー、時間が必要であるため、毎年、開催できないのではないかと心配しながら、20年間続けてこられた。2012年にジョヴァンニ先生が亡くなった時、大きな悲しみと苦しみのうちにすべてが終わってしまうのではないかと思った。しかし、先生の「遺産」を死なせるわけにはいかず、今日まで歩み続けることになった。

 ある時、知らない方に「あなたがたは宗教団体ですか」と問われた。ある友人が「主催者はカトリック教徒ですが、誰でも協力できます」と答えた。するとその方はこう言った。「やはり宗教プロパガンダのためですね」と。そこで友人は「ナザレのイエスが人々の間に何を運んだかご存じですか。宗教ではなく、兄弟愛です。私たちも同じことをしたい。協力していただけますか」と提案を持ちかけた。

 今年のTonalestateはようやく対面に戻り、86日から8日まで予定されている。テーマの発表は近々行われる予定です。参加されたい人は、ウェルカム!。

詳しくは:https://tonalestate.org/

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2015年のTonalestateのパネリストの最後の挨拶。

向かって左から3番目のパネリスト:松村直人氏(福島)

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2017年:私の向かって左にMichel Warschawski(パレスチナ

人の人権活動家)、その隣にAnne Brolly(アイルランド人人権活動家)。

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