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多様性を尊重する社会へ −LGBTQ+学生の現状とニーズを探る−
2024.11.05
南山大学の紀要のひとつ,『アカデミア 人文・自然科学編 第28号』が,機関リポジトリで公開されました(ここから目次が閲覧できます)。
そこには,本学科所属の教員が執筆したものがいくつか掲載されています。
ここでは,そのひとつ,
南山大学におけるLGBTQ+学生に関する現状・ニーズ調査
を,執筆者の池田先生が紹介します。
(タイトルをクリックするとリンク先から閲覧できます)
皆さんは「LGBTQ+」という言葉を知っていますか? 近年,メディアでも取り上げられる機会が増え,耳にしたことがある人も多いかもしれません。LGBTQ+とは,レズビアン,ゲイ,バイセクシュアル,トランスジェンダー,クエスチョニングなど,性的指向や性自認*が多様な人々を表す言葉です。
この研究を始めるきっかけとなったのは,元消防士と元警察官のゲイカップルである「KANE & KOTFE」さんとの出会いです。お二人は,交際12年目のゲイカップルで,YouTubeで二人の日常を発信しながら**,全国各地の学校や企業・自治体などで「個性を認め合うこと」の大切さを伝えています。KANE & KOTFEさんを南山大学人文学部主催のFD研修会に講師としてお招きするにあたって,教職員にLGBTQ+学生の実態を知ってもらいたいと思い,大学でアンケート調査を実施しました。
* 性的指向:どのような人に恋愛感情や性的魅力を感じるか,性自認:自分がどのような性別だと感じているか
** KANE & KOTFE YouTubeチャンネル ←クリックするとYouTubeへとびます
調査から見えてきた学生たちのリアル
この研究では,調査に回答してくれた275名のうち,4人に1人が自分自身をLGBTQ+当事者(かもしれない)と認識していること,また多くの学生が性的指向や性自認に関するハラスメント的言動や差別を経験したり,見聞きしたことがあると回答しました。
さらに,自由記述欄には,学生たちのリアルな声が綴られていました。
●「ホモはキモい」という発言を聞いた。
●男女が恋愛をする,ストレートの人を想定した社会が構築されているので,必然的に隠したり,嘘をついたりしなければならないことが多いので,残念です。
●友人が各階に多目的トイレがないことを嘆いていました。
これらの言葉は,南山大学が,LGBTQ+の人々にとって,いかに生きづらい場所であるかを物語っています。
あなたの個性が活かされない社会
「多様性」という言葉が頻繁に使われる現代において,「多様性ハラスメント」や「多様性を認めないことも多様性」といった矛盾した言説を耳にすることがあります。しかし,本来,人間は一人ひとり異なる個性を持った存在であり,私たち一人ひとりが多様なのです。
多様性を尊重し,互いの違いを認め合う社会は,LGBTQ+の人々だけでなく,私たち全員にとって生きやすい社会です。自分の個性を認め,活かせる社会は,周りの人の個性も認め,活かせる社会に繋がっていくでしょう。
逆に,多様性を大切にし活かすことができないということは,自分が大切にされず活かされないということです。
周りの人と違うことで排除されたり,自分の個性を表現することを恐れたりする社会では,誰もが生きづらさを感じることになります。
心理学で社会を変える
心理学というと,「心の内側」を探求する学問というイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし,心理学は,個人だけでなく,社会全体のウェルビーイングにも貢献できる学問です。
私は,コミュニティ心理学という分野の研究者として,「LGBTQ+当事者を含むすべての人が,より良い社会を築いていくために何ができるのか」を研究しています。心理人間学科では,多様な視点から人間と社会を探究することができます。
(池田)
FD研修会時の一コマ