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【日独ユースサミット体験談】日独ユースサミットへの参加を通じて
2023年11月08日
今年の夏季休暇のうち1か月を利用して、ヨーロッパを一人で旅してきました。訪れた場所はドイツ、スイス、オーストリア、フランス、チェコ、ハンガリー。ドイツは4年ぶり、3度目の訪問です。今回の主な目的は、ベルリンでの日独ユースサミットへの参加。ここでは、そのプログラム体験談を綴りますね。
「世界で最も美しいカフェ」といわれる、ウィーン美術史博物館内のカフェ
本プログラムは、将来の日独交流を担う若者の育成、および持続的な日独交流の形成が目的とされています。コロナ禍を除き、例年日本とドイツを交互に開催地として催されてきたこの機会。今年はドイツにて、「KRISE - Was tun? 私たちにできること」を主題として行われました。
„KRISE" とは、日本語で「危機」を意味します。現代に生きる私たちは、様々な危機に直面していますね。コロナ危機はもちろんのこと、ウクライナ危機、難民危機、経済危機、そして気候変動の危機... 挙げ始めるときりがないくらいです。そんな現状を前に私たちにできることはないかと、グループに分かれて話し合います。
私が参加したグループは「メンタルヘルス」を切り口として、危機について考えました。ここでの学びは、人間にとって「自己表現」がいかに肝要であるかということです。例えば、ドイツで暮らす日本人移住者の自助コミュニティを運営する女性を訪問した際、まさに移民が抱えるメンタルヘルスの問題の根幹にも「自己表現」の課題が眠っていると推察しました。人は自己表現を通して、社会との繋がりや自分の存在意義を実感するものです。ですが言語の問題で意思伝達が思うに任せない場合、慣れない環境で自分の強みを発揮できなかったり行動を制限されたりする場合、マイノリティの立場からアイデンティティを受け入れてもらえない場合。このような場合、人々は不安や孤独感を抱き、心にひずみを抱えることになってしまうでしょう。だからこそ、一度社会と自分を切り離し、本来の自分と向き合い自己と対話する時間としてアートセラピーや筋弛緩法などがあり、はたまた安心して自己表現できる場所として当事者コミュニティを形成することが支援の在り方となっているように思われました。
ベルリン日独センターにて、プログラム最終発表およびポスター掲示
また、プログラムの自由時間で、個人的にドイツ側参加者と社会情勢や政治についてドイツ語で語り合ったり、ジョークで笑い合ったりするひとときがありました。「外国語を学ぶ意義」というのは、このような瞬間に深く考えさせられます。同じ熱量で語り笑い合う状況を生み出すことは、言語や文化が異なる者の間では必ずしも容易なことではありません。それでも、たとえ外国語運用能力が足りていなかったとしても、相手に伝えよう、相手を理解しようと互いに歩み寄りあったとき、そうして少しでも意図が伝達されたとき、異文化交流における大きな喜びと相手との信頼関係が築かれるものです。
危機によってさらなる分断が世界中で生まれている今こそ、自分が持つ想像力を精一杯に働かせ、他者に欽慕の念を持ってコミュニケーションを図ろうとする姿勢が私たちには求められるでしょう。
旧友と過ごす、Mauerpark での午後
2020年度入学 野口 杏奈