教員コラム 総合政策学専攻
現代中国研究へのアプローチ(総合政策学 李 彦銘 教授)
2026年09月01日
私が研究者の道を歩み始めたきっかけは、2004年から2005年まで日本での交換留学の経験だった。2000年ごろから日中関係はすでに「政冷経熱」と呼ばれるようになっていた。中国のWTO加盟に伴い日中の経済関係、人的交流がますます熱を帯びる一方、歴史認識などの問題で政治関係、国民感情が悪化し、やがて2005年には全国規模の「反日デモ」が起きてしまった。なぜこのように一見して矛盾する動きが起きるのか、この問題関心が私の最初の出発点だった。
ただし研究するに際してはまず日頃から抱いた問題意識を、学問的な問いに転換しなければならない。つまり検証可能、さらに学術的に意味を持つ切口を見出すことである。そこで選んだ観察の対象は、日本の経済界である。彼らがどのような対中認識を持ち、そして日中の政治関係の中でどんな役割を果たしたのかをまず徹底的に調べ上げ、その後彼らの認識形成のメカニズム、彼らの政治的役割をサポートするメカニズムについて仮説を提示して検証する。これが私の博士論文となった。
博士論文の後は中国の産業政策と対外政策のリンケージや中国の国際政治・経済学者が中国外交に関与したプロセスなど、博士論文の延長線上にあるテーマについて、私は研究を広げている。また、オーソドックスな政策決定過程だけでなく、女性や若者などのより幅広い社会集団と政策決定の関わりについても問題関心を抱いているので、近年はいわゆる「民間の記録」を中心に資料収集を進めている。とりわけ各種企業史や団体の歴史、政策決定の現場に関わっていた人物の回顧とオーラルヒストリーなどがその中心である。将来的には、こうしたアプローチを軸に据え、日本と中国の比較研究へと発展させたいと考えている。
