教員コラム 総合政策学専攻
研究テーマに出会うまで(総合政策学 三輪 まどか 教授)
2026年05月15日
本学大学院社会科学研究科には、多彩な研究テーマを持つ先生方が集まっており、その研究内容や研究に至るまでの歩みを読ませていただくのは、私にとって楽しみの一つである。私自身の研究テーマについてはすでに前回、大学教員となった道筋は前々回に記したため、今回は研究テーマをどのように選んだのかについて書いてみたい。
私の学部時代のゼミは、民法(不動産法)と労働法であった。なかでも労働法は、法律学の解釈中心主義に難儀していた私にとって、社会の現実と結びついた学問として救いのように感じられた。民間企業でOLとして働いた後、私は法律学専攻の修士課程に進学し、労働法を専攻した。修士時代は、OL時代の経験から、労働における男女格差や、労働者と使用者の力関係の格差に関心を持ち、イギリス雇用権法(Employment Rights Act)を中心に学びを深めた。比較法研究が重視される法律学の分野において、比較対象国としてイギリスを選んだのは、単に指導教員がイギリス法を専門としていたからである。
修士課程を終えたものの、当時は就職氷河期であり、年齢を重ねた女性が就職するのは容易ではなかった。また、当時在籍していた大学院は博士課程が設置申請中であり、いくつかの大学院を受験することにした。幸いにも一つの大学院に合格し、博士課程へと進学できた。
博士課程に進学した頃、ちょうど介護保険制度が始まった。格差の問題を考えるのであれば、より脆弱な立場に置かれやすい人たち----高齢者や認知症の人たち----に目を向けようと考えたことが、現在の研究につながっている。ただし、この研究テーマにたどり着くまでには、2年ほどの時間がかかっている。進学時に提出した研究計画書は、指導教員の他大学への移籍などもあり、指導体制が十分でない状況のなかで模索を続けるうちに、方向を変えることとなった。通常であれば3年で修了できるはずの博士課程であったが、博士論文を完成させるまでには5年半を要した。
このように、私の研究の歩みは決して順風満帆なものではない。しかし振り返ってみると、その時々の経験や関心の積み重ねが、現在の研究へと自然につながってきたようにも思う。研究テーマは、最初からはっきりと見つかるものではなく、迷いや試行錯誤の中で少しずつ形づくられていくものなのかもしれない。これからも少しずつ変化をさせながら、研究に邁進できたらと思う。
2025年8月に訪問したサウサンプトン大学とロンドン・保護裁判所
