教員コラム 総合政策学専攻
囲碁、AI、そして経済・財政(総合政策学 澁谷 英樹 准教授)
2025年01月15日
私の趣味のひとつに囲碁があります。この趣味との出会いは、2000年11月、ITバブル崩壊の頃でした。当時の私は中学2年生でしたから、非常に半端な時期といえます。これは、長野五輪が終わった後の信州で、父が失業や倒産に直面し、故郷の神戸に転居した時であったためです。神戸には大正生まれの祖父母がまだ健在でしたが、移った先の神戸でも阪神・淡路大震災以降の不況がさらに悪化しており、父は再就職に大変苦労していました。この翌年には、頼もしい祖父が亡くなり、父の忍耐は相当なものであったようです。
こうした中で、私が出会った囲碁は、お金がかからないという面でも、陣取りのために効率性を競うという面でも、好ましい趣味でした。囲碁には、黒と白の色分けしかなく、石の能力には全く違いがありません。石の四方を囲めば取ることができ、将棋のような持ち駒はありません。その目標は、限られた盤面の交点(目)をできるかぎり多く確保するというものです。交点は、1目、2目......と数え上げることができ、黒と白のどちらが有利であるかは、この目数の多さにより明確です。もちろん、黒白が互いに陣地を広げようとすれば接近戦にならざるをえず、石の四方を囲むかどうかのせめぎ合いが発生します。
いま、私は財政学者でありAIの研究者ではないのですが、今日のAIがこの囲碁のルールをなぞれるのは、当然のように感じます。非常に合理的、効率的でありますし、二進数やブール値にも相性が良いように感じられます。また、同形反復は、forやwhile、言語によってはdo-loopといった関数をイメージするのに役立っているのかもしれません。
ところで、専門外のAIにまで話を広げてしまった私が、果たしてどれくらいの棋力であるかについては諸説あるところです。いかんせん、近頃はあまり石を並べていないので定石も忘れていますし、あまりはっきりと申し上げると、かつてしのぎを削った碁敵たちに笑われてしまいます。したがって、参考となる写真を挙げるのみにとどめておきたいと思います。とくに私は、週刊少年ジャンプに連載されていた漫画作品『ヒカルの碁』の影響で、たいへん囲碁人口の多い世代にあたります。その武勇伝を書きますと原稿が長くなりますので、これはまたの機会にとっておきましょう。