教員コラム 総合政策学専攻
一部自腹でも対面で国際学会に参加することついて(総合政策学 太田 和彦 准教授)
2024年11月15日
2024年の春から秋にかけて、スペイン(4月)、ハワイ(5月)、オランダ(9月)に研究出張に行く機会を得た。円安の影響で出費はかさみ、一部自腹を切りながらの参加となったが、その価値は十分にあった。各地での経験と得られた知見について、ごく簡単に紹介したい。
スペイン・ビルバオでは、フードテックの国際展示会Food 4 Futureに参加。食料生産システムの持続可能性を向上させる最先端の食品技術の動向を直接肌で感じることができた。特に、世界各地の事業者や研究者によるピッチ(5分程度のプレゼンテーション)は刺激的で、特に代替タンパク質の開発状況や、国ごとの消費者受容性の違いや共通点と、その文化的背景(例えば、大豆はアメリカなどでは馬の餌のイメージが強いなど)を知る機会となった。
続くハワイ・オアフ島では、第11回東西哲学者会議に参加。全体テーマは「トラウマと癒し」で、アジア太平洋圏の植民地時代や第二次世界大戦期の影響についての、異なる文化背景を持つ研究者たちとの意見交換は、自身の研究を新たな視点で見直す大きな転換点となった。また、先住民の土地活用法と食文化の復権の取り組みが行われている養魚場や芋畑などを見ることができたことも、食農倫理研究が現代の課題だけでなく、歴史的な文脈や文化的トラウマとも深く関連していることを再認識する機会となった。ちなみに、過密スケジュールだったため、残念ながら海に入れる時間がなかった。次は休みをとってシュノーケリングをしに行きたいと願っている。
そして9月のオランダ・ワーゲニンゲンでは、ヨーロッパ食農倫理会議に参加。25周年記念大会ということもあり、懇親会が古城(!)で開催されるなど、刺激的な大会となった。印象的だったのは、動物倫理・家畜福祉の重視である。アジア太平洋圏の食農倫理との比較への応用可能性について考察する機会を得た。
パンデミック以来、4年ぶりの対面での国際会議参加となった今回の一連の研究出張は、経済的な負担の大きさに当初はためらいがあったものの、その意義はとても大きかった。オンライン会議が一般化した現在でも、実際に現地に赴くことの重要性を再確認した。もちろん、オンラインというチャンネルは残し続けることが望ましいが、特に、非公式な対話の機会、文化的文脈の理解、ネットワーキングの偶発的な拡大、最新技術のデモンストレーションなどの場面では、対面での参加の価値を強く感じた。研究費も研究時間も尽きたため、当面は国外での活動は難しいが、向こう一年間は今回の出張で得た豊富な知見と刺激を消化するのに忙しくなりそうである。
[リンク]
Food 4 Future https://www.expofoodtech.com/
東西哲学者会議(EWPC) https://manoa.hawaii.edu/ewpc/
ヨーロッパ食農倫理会議(EurSafe) https://eursafe2024.org/
写真①:EurSafe2024で報告後「撮ってあげるよ!」と言われて
写真②:懇親会で、偶然同じテーブルだった方(写真右)が次回のトルコ大会の主催者だった