教員コラム 総合政策学専攻
行政学研究とフィールド(東広島市役所黒瀬支所での調査)(総合政策学 茂木 康俊 教授)
2023年06月30日
このコラムは南山大学の社会科学研究科への入学を考えている方が、主に想定する読者ですので、私の研究について書きたいと思います。私は、福岡県内の大学の学部・大学院を経て、福岡県内の新設の大学で3年半勤務し、その後、広島県内の大学で11年半勤務しました。大学院生の時から、当時研究の面でも実務の面でも注目が集まっていた政策評価・行政評価について、米国の事例や制度を日本に紹介するタイプの研究をどちらかというと行ってきました。
このスタイルの研究が大きく変わったのが、2020年に行った東広島市役所黒瀬支所での調査がきっかけです。その年に、所属大学に大学と地域との連携部署ができ、その部署の協力の下に、2020年に黒瀬支所、2021年に東広島市役所本庁で利用者に対する質問紙調査を行いました。前者については、国際誌に英語で論文を発表しました。https://doi.org/10.1007/s11115-021-00574-w
それぞれ約1週間ほどの調査でしたが、役所の一角に、研究協力者のゼミ生達と朝からブースで待機し、利用者に対し質問票を渡すことで、行政の現場の雰囲気を感じることができました。調査期間中に私とゼミ生が目にした役所の姿は、調査者の目がある特別な環境のため、厳密には普段通りの姿ではないかもしれませんが(このような制約をホーソン効果と言います)、これまで書物や論文等で学んでいた行政学の理論や学説をより深く考えさせる貴重な経験となりました。
行政学や公共政策学の研究において、具体的な政策分野や研究フィールドを持つことの重要性が指摘されることがあります。私にとって、前任校における東広島市での調査は、そのような具体的な研究フィールドをもたらしてくれた研究上の得がたい経験となり、今でも関係者に感謝の念を持っています。2023年4月に南山大学に着任し、まだ日が浅いために愛知県や名古屋市の近隣地域のことは現在勉強しているところですが、学部のゼミ生や院生の行政学の学習や研究が深まるように、愛知県や名古屋市の近辺で研究上のフィールドを開拓していきたいと考えています。
左の写真は、2020年に調査を行った東広島市役所黒瀬支所の外観です。右の写真は、黒瀬支所の近くも流れている黒瀬川の川辺です。黒瀬川は二級河川で、東広島市の山に源流があり、黒瀬地区を含め東広島市内を通り、呉市で海に行き着きます。