教員コラム 総合政策学専攻
気候変動と環境モニタリング(総合政策学 大八木 英夫 教授)
2024年05月02日
IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書(2021年8月)によれば,気候の現状として,「人間の影響が大気、海洋、及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。」と報告している。
2023年は世界各国で平均気温記録が更新され,世界的に観測史上最も暑い1年になった。このとき,私たちは,世界各地で異常高温が発生したほか,熱波(※1)や干ばつ(※2),大規模な洪水,山火事などが多発したニュースに多く触れた。また,その影響を受けて農作物の不作が深刻化し,食料価格が高騰したことも記憶に新しい。これらの原因は,温暖化による影響だと言ってしまえば簡単であるが,原因は一つではない。その後の解析では,2023年は南米ペルー沖の海面水温が高くなる「エルニーニョ現象」が発生したことが,記録的な暑さの要因の一つともされている。このような情報は,社会に浸透しているのだろうか?
環境モニタリングを進めている,研究対象である然別湖(北海道)では,暖かかったはずの2023-24年の冬には,2022-23年より早い時期に全面結氷した報告もある。「=温暖化」の影響とは言えない,結果でもあろう。もちろん,近年になって,全面結氷が無くなったり,期間が短くなったりしているのが世界的にも報告されている。世界的な気温の予測と地域的なものはそのスケールからも異なった解釈が必要なのは当然であり,「現場」で「結果となるデータ(水温など)」を計測・解析を進め,なにが起こったのか?の理解をさらに進めることを速めていかなければならない。と,思いを強くする結果であった。
気候変動による水環境への影響は,水温,降水量の平均値の量的な変化ならびに時期の変化に付随して,河川流量の変化,積雪量の減少,融雪・結氷時期の変化,湖水水位の変化,水質の変化等が生じ,水供給への影響、生態系への影響が現れる。とされている。いずれも,社会的な大きなニュースにはならないが,社会を支える「場」が徐々に変化するニュースである。これらの現象を理解するためには,当然一人ではできない。自然環境にもっと多くの人の目線が高められるよう,大学人として研究・教育について勤め,仲間を増やしたいものである。
ちなみに,2024年4月気象庁発表によれば,「2023年の春から続いているエルニーニョ現象は、終息に向かっている。」との報告もあり,50%と確率を出しながら,「夏の間にラニーニャ現象が発生する可能性と平常の状態が続く可能性が同程度である。」と発表している。今年の夏はどうなるのだろうか?来年には,環境モニタリングの結果を見ながら,答え合わせをしたいものである。
※1.広い範囲に4~5日またはそれ以上にわたって,その地域の平均的な気温に比べて著しく高温な空気が覆 う現象
※2.長い間,雨が降らないなどの理由で土壌が乾ききってしまい,農作物が育たない状況