教員コラム 総合政策学専攻
研究テーマを決めるということ(総合政策学 山田 哲也 教授)
2023年03月31日
どのような分野でも、「流行の研究テーマ」というものがある。要は「バズっているテーマ」である。社会科学は、基本的に世の中の動向の中からテーマを見つけるので、どうしてもそのようなことが起きる。学生にしてみれば、資料や文献は探しやすいし、注目も浴びやすい。そこで、つい、流行のテーマに飛びついてしまう。しかし、それは実は危険なことである。誰もが取り上げる以上、他人の研究成果と容易に比較され、「AさんよりBさんの方がデキがいいね。あ、Cさん?あれは論外」という評価がくだされやすいからである。
では、誰も見向きもしないテーマの方がよいのか?先行研究が乏しい、あるいは存在しない、ということにも一定の意味はある。わざわざ取り上げる価値がないかもしれないからである。
時代の一歩先を行くとなかなか評価されない。時代と歩調を合わせると、他人と比べられる。時代遅れは論外である。いかに「時代の半歩先」のテーマを設定するか。「あ、今まで気づかなかったけれど、そのテーマ面白いね」というテーマを探し出せるか。結局、大学院生であれ、研究者であれ、「ぎりぎりのところ」を攻めることになる。社会科学の手法で過去のできごとを取り上げる場合も、「今日的意義」を意識する必要もある。
では、どのように攻めるか?日常を観察し、流行とは距離を置き、広く長い目で自分自身の学問分野を見渡し、わずかにでも研究全体を前進させることを意識するほかない。辛い作業である。「尺取り虫は、伸びるために身を縮める」と自分に言い聞かせながら、世間や文献と戦うしかない。それを楽しめるようになったら、あなたも立派な「研究者」である。