教員コラム 総合政策学専攻
2年ぶりのフィールドワーク:岡山県真庭市での木質バイオマス活用事例調査(総合政策学 藤本 潔 教授)
2021年11月17日
2年ぶりのフィールドワーク:岡山県真庭市での木質バイオマス活用事例調査
コロナ禍に見舞われ早くも2年の月日が流れようとしています。この間、どこにも調査に行くことができず、研究が滞っています。前回のコラムで私の現在の研究テーマについてはお話ししましたが、主にマングローブ生態系研究に取り組んでいます。海外調査に行くことは難しいものの、西表島なら行けるだろうと思っていたのですが、2年続けて夏休み期間中に緊急事態宣言が出され、結局どこにも行くことができませんでした。
私が代表を務めるNGO南遊の会主催のベトナムマングローブ植林スタディツアーも2年間ストップしています。しかし、いつまでも活動停止状態という訳にもいきませんので、国内でのスタディツアーとマングローブ植林地での持続的な森林資源利用の可能性を探るため、「里山資本主義」を標榜し木質バイオマスを始めとした地域資源の活用に積極的に取り組んでいる岡山県真庭市に、先週末NGOの仲間達と1泊2日で視察に行ってきました。
ここでは真庭バイオマス発電株式会社と銘建工業株式会社の2つの木質バイオマス発電所(それぞれ、出力1万kw/hと5千kw/h)が稼働しています。前者は真庭市や真庭森林組合等の10団体が事業主体となり設立された組織で、地域の間伐材や未利用残材、製材クズ、一般家庭の庭木の剪定材などをバイオマス集積基地で買い取り、そこでチップ化して燃料に用いています。後者は集成材等の製造工程で発生する削り屑や端材を燃料としています。このような地域を挙げての「大きな里山資本主義」の一方で、「小さな里山資本主義」と称し、市内の各地区ではそれぞれの地域資源を活用した取り組みも活発に行われています。鳥取県境に位置する中和(ちゅうか)地区では、宿泊施設津黒高原荘が灯油ボイラから薪ボイラへ切り替え、地域振興会社アシタカが地区内から集めた材で生産した薪を使用しています。その他にも、地域住民と地域おこし協力隊員や移住者が一体となった様々な取り組みがなされており、過疎化が進む中山間地域の持続可能な社会の在り方を考える上で大きなヒントが得られる地域だと実感できました。
真庭市勝山のバイオマス集積基地