教員コラム 総合政策学専攻
コロナ禍での教育と研究(総合政策学 石川 良文 教授)
2021年07月19日
コロナ禍での教育と研究
2020年1月から新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、2021年7月現在既に1年半の月日が流れようとしています。この間、世界の動きは一変し、経済、社会、環境の様々な側面に多大な影響が及びました。大学では、対面形式の授業からオンライン形式の授業に変わり、更に対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型の授業も多くなりました。大学院の授業は、元々少人数であるため時期によっては対面授業を行うことも可能でしたが、緊急事態宣言の発令などに応じて、臨機応変に適切な授業形態をとってきました。私もこの間2名の大学院生の研究指導を行ってきましたが、そのうち1名は中国からの留学生で母国に居たために、オンラインで授業を行ってきました。本学に限らず、せっかく留学してもその国に滞在できないのは、大変残念なことです。オンラインでの授業は、通学しなくてもよく時間的には効率ですが、授業の理解度などを検証し、コロナ終息後も含め今後の大学の授業のあり方を考える必要があります。
一方、我々大学教員はコロナ禍であっても着実に研究を進める必要があります。私は従来行っている研究に加え、コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済影響の分析を行いました。この研究では、特に観光客の減少が地域経済に及ぼした影響を分析するため、私自身が開発した47都道府県間産業連関表を用いました。コロナウイルス感染症の拡大によって観光客が減少すると、そのダメージは宿泊業や土産物店、飲食業に直接及ぶことは想像できると思いますが、その影響はさらにこれらの産業で使用する財やサービスの供給者にも及びます。例えば、ホテルはその運営にあたって、清掃やシーツの洗濯などいわゆるリネンサービスを外注している場合、それらの産業にも影響が及びます。私が行った研究では、例えば北海道では、小売りの影響が最も大きく、その次に宿泊業、飲食サービス業でしたが、次いで農業、畜産、漁業に大きな影響があったことが分かりました。また、感染者が人口当たりで多い地域、つまり感染率が高い地域で経済的な影響が大きいのは分かりますが、分析してみると、感染率の低い鳥取、長野、秋田などで経済的な影響が大きいことが分かりました。これらの地域では、都道府県内の観光を維持・増加させるいわゆるマイクロツーリズム政策を積極的に行うことが重要に思われます。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、様々な面で多大な影響があり、少しでも早く収束させることが必要ですが、科学的な分析は社会科学の分野でももっと多くなされる必要があります。