教員コラム 総合政策学専攻
総合政策学専攻 大八木 英夫 准教授
2021年04月16日
気候変動と湖沼
土地には,様々な環境・文化・社会・風土を見ることができ,希少性・固有性・特異性を持つ貴重なものも存在しています。例えば,ジオパークは,「地球・大地(ジオ:Geo)」と「公園(パーク:Park)」とを組み合わせた言葉で,「大地の公園」を意味し,地球(ジオ)を学び,楽しむことができる場所であり,山や川を観察し,体感することで,その成り立ちや仕組みに気づくことができます。
しかし,「水域」では,風景を見て学び・知ることはできても,その特性を知るためには,調べる必要がでてきます。現代社会の課題の一つでもある,気候変動の影響を最も強く受けるのは,陸水においては水温と凍結であり,その地域性に留意して,世界の湖沼・河川の結氷状況や水温と湖水凍結に関する研究が進められております。かつて湖面が凍り,氷上スケートを楽しむことができた湖が凍らなくなったりするなど「目に見える」状況の変化もありますが,日本最大の琵琶湖(滋賀県)では,2019年,2020年と全循環が生じなかったことが確認されており,冬季における鉛直循環不順のような「目に見えない」現象への影響も危惧されております。
「目に見えない」現象を調べ,普遍的な理論構築をおこなうことは,自然の実験室で,【結氷した・しなかった】,【全循環が起こった・起こらなかった】,このような1年に1回の結果の中から,そこで何が起こったのかを読み解く必要がでてきます。また,気候変動は常に起こることで,毎年,少しずつ異なる結果が出てくることもあります。そのなかで,継続的な調査をつづけられるようにし,観察だけでなく,「目に見える」結果として公表できるように努めて参りたいものである。
倶多楽湖(北海道)にて(2017年3月)
安全第一に,最深点へと約2kmの距離を徒歩で向かう。
(春~秋の氷がないときは,ボートを利用)
氷を切り抜き,深さ約140mの水温・水質調査