教員コラム 総合政策学専攻
総合政策学専攻 狭間 諒多朗 講師
2021年06月01日
社会学の活かし方を模索しています
私は社会学者です。今回は、社会学の知見を現実社会に活かそうとした話をします。
先日、総合政策学部の1年生と2年生向けにイベントを行いました。このイベントは、学生どうしの交流を促進することが目的の交流会で、どうすれば学生どうしが上手く交流できるのかを考えました。一緒に運営してくれた学生たちとも議論を重ね、最終的に次のようなやり方で進めることに決めました。そのやり方とは、番号の書かれたカードを配布し、同じ番号の人どうしで集まって交流してもらうというものです。また、交流会の途中で2回、カードを配り直すことにもしました。つまり、合計3回、メンバーを入れ替えて交流を行うようになります。こうすることで、普段は話したことのない人とも、半ば強制的に話すこととなり、交流の幅が広がるだろうと考えたからです。場所だけを用意して、あとは学生どうし、好きに交流してもらうという形式でもよかったですし、本音を言えば、そのほうが運営側としては楽なのですが、今回はこのやり方にこだわりました。ある社会学理論を今回の交流会に活かしたかったからです。
その理論とは、グラノヴェッターの「弱い紐帯の強さ」というものです。この理論の概要は、普段からよく接している人々(強い紐帯)よりも、たまにしか合わない人々(弱い紐帯)から得られる情報のほうが有益である、というものです。なぜかというと、強い紐帯から得られる情報は、自分もすでに持っている可能性が高い一方、弱い紐帯から得られる情報は自分の持っていない情報であることが多いからです。
今回の交流会では、参加者に、この弱い紐帯をたくさん結んでもらいたいという思いから、先の方法にこだわりました。また、交流会に入る前に説明会を実施して、「弱い紐帯の強さ」についてのミニ講義を行いました。普段話さない人々とつながる重要性を、参加者に説明するためです。
そんな講義のおかげか、参加者の学生たちは自ら積極的に話しかけているようで、運営側のアシストがほとんどいらないくらい、盛り上がっていました。「新しい友だちがたくさんできた」との声も多く聞かれ、交流会を実施した甲斐があったなぁと感じています。
社会学の知見を活かす方法を考えることは、社会学を総合政策学の中で生かす方法を考えることにつながると思っています。今回は、参加者に直接、社会学の知見を説明するという方法をとりました。これが答えというわけではありませんが、一つのヒントにして、今後も考えていきたいと思います。
左の写真は、交流会の様子です。カードで配られた番号ごとにグループに分かれています。右の写真はスカイランタンが上がっている様子です。夕方にしか時間がとれなかったことを逆手に取り、このような「映える」仕掛けを用意しました。