教員コラム 総合政策学専攻
総合政策学専攻 鶴見 哲也 准教授
2020年03月16日
自然とのつながりと幸福度
私は「持続可能な発展」を主たる研究対象としてきました。いわゆる「経済発展」が本当の意味で人々のためになっているのか、についてみなさんはどのようにお考えでしょうか。経済発展をしてきているのに、人々の幸福度は上昇していないことがたびたび日本では注目されてきています。毎年発表される世界幸福度報告書(World Happiness Report)では日本は先進国の中で最低水準、他方で北欧諸国は上位5か国の常連です。私は最近、この日本と北欧の差はどこにあるのかについて興味を持って研究を行っています。そのなかでいくつかのヒントといえるものが現場を見ることで見えてきています。その根本のところは正式には今後の研究成果として発信していくことにして、ここで一つだけ感覚として感じていることを書かせていただくならば、北欧には「日常の延長に自然がある」のです。
学術研究では心理学のアンケート質問票で把握される「自然とのつながり」度合が人々の幸福度と関係していることが示されてきています。日本で私が独自に行ったアンケートでは子ども時代には自然との触れ合いが日本はそこそこあるのですが、大人になると一気に減ります。しかし、フィンランドで独自に行ったアンケートでは子ども時代はもちろん大人になっても極めて日常的に緑と触れ合っているのです。都会の人であってもです。
フィンランドの現地インタビュー調査で得た印象的な言葉があります。「忙しいと思ったら森に行く」。フィンランドの首都ヘルシンキには車で40,50分のところに国立公園があります。4週間と言われる夏期休暇は多くの人が近場の別荘に行き自然の中で過ごします。日本では仕事で疲れたら自宅でのんびりしたり近場のショッピングセンターに行ったりということが通常なのではないでしょうか。フィンランドでは心がざわつくと森に行く、疲れたら森に行く、のだそうです。疲れたら気づいたら森に来ているのだそうです。
ヘルシンキ中心部から車で40分にある国立公園の中へ