教員コラム 総合政策学専攻
総合政策学専攻 藤本 潔 教授
2018年12月01日
私は毎年ミクロネシアのポンペイ島や沖縄の西表島に出かけてはマングローブ生態系調査を行っています。またベトナムでは、私が代表を務めるNGO(南遊の会)の活動としてマングローブ植林事業も行っています。近場では、2016年度まで総合政策学部があった瀬戸市郊外に広がる海上の森で里山生態系の調査も行っています。
マングローブ林も里山林も、森の中に足を一歩踏み入れると、都会の喧騒や日常の慌ただしさを忘れさせてくれる静寂の世界が広がります。耳をすませば鳥のさえずりや木の葉がそよぐ音が聞こえます。ホッと心が落ち着く瞬間です。ただ油断すると、蚊の襲撃に見舞われます。それにマングローブ林の中は複雑に入り組んだ根っこに行く手を阻まれたり(写真1)、泥濘に足を取られたりして、少し歩くだけでも相当の体力を消耗します。マングローブ林も里山も、常に開発の危機にさらされています。マングローブ林は温暖化に伴う海面上昇によって水没の危機にも直面しています。
今年2月の西表島の調査では、シマシラキ(バックマングローブの一種)が立ち枯れしている現場を発見しました(写真2)。ここでも海面上昇の影響が目に見える形で現れつつあるようです。8月にはもう一度調査に出かけ、9月の日本地理学会でその実態について報告する予定です。
マングローブの森に足を踏み入れて、早30年以上の時が流れました。この泥沼の世界から足を洗おうにも、今やらなければならないことが目白押しで、なかなか洗わせてもらえません。
写真1 ミクロネシア連邦ポンペイ島のヤエヤマヒルギ林
写真2 西表島のオヒルギ林内で確認された立ち枯れしたシマシラキ