教員コラム 経営学専攻
企業と投資家、投資家の間のコミュニケーション(経営学 伊藤 彰敏 教授)
2026年03月16日
株式市場における価格形成の問題は、常にファイナンスの中心的な課題となってきた。株価とは、企業に対する請求権を持つ株式の価格である。そして株式が権利を保有する対象は、将来、企業が生み出すキャッシュフローである。従って、株価形成のポイントは、その株価が将来に関する情報をどれだけ反映しているか(情報効率性)ということである。
上場企業は、様々な情報発信をしている。年度決算の際に公表される有価証券報告書、四半期ごとに業績の概要や豪積見通しを発表する短信、そして機関投資家や個人投資家を対象にした説明会の開催、これらは企業側から投資家に向けた情報発信の方法である。また公開される情報も財務内容にとどまらず、環境・社会に対する配慮、人的資本政策など多岐にわたるようになってきている。
投資家、特に機関投資家は、どのように情報を収集し分析しているのであろうか。証券会社には、アナリストと呼ばれる職務の人たちが大勢いて、担当企業の業績実績や業績予想について分析しレポートを発表している。株式市場で多額の資金を運用する機関投資家のファンドマネージャーは、こうした証券会社のアナリスト・レポートを読み込み、自らの分析を加えて売買の意思決定をしている。
ファイナンスの実証研究では、こうした企業側から発信される情報内容や質、証券会社や機関投資家の情報収集・分析能力が、株価にどのように影響しているかを主たる視点として分析してきた。最近では、こうした情報の出し手(企業)と受け手(投資家)だけではなく、投資家間のコミュニティにおける情報交換の役割についての研究が進んでいる。機関投資家間の情報交換チャネルは、様々な社会的要素が絡み、一層複雑でリッチな分析対象を生み出している。直接観測することが困難なチャネルも想定され、ネットワーク分析や機械学習など最新の手法を駆使した分析が増えている。