教員コラム 経営学専攻
QR コードと誤り訂正符号(経営学 宮元 忠敏 教授)
2024年11月01日
日頃、QR コードの恩恵にあずかる場面は多いのではないかと考える。身近なところでは、
大学のエレベーター内、テレビの画面内、新聞紙面上等でQR コードを見かける。皆さん読
み取って思いのまま活用されているのではないでしょうか。世間では、インバウンドとキャ
ッシュレス決済との関連でQR コードは日常であり、さらに新しい日常のQR コードも語
られている。例えば、乗車券とその読み取り機器の話である。
実は、QR コードは、ものづくりの場面での課題解決から生まれたアイデアの塊である。
例えば、バーコードではスペースを使っても、部品に添付できる情報量に限りがあった。そ
こで、省スペースでありかつ漢字の使用も可能としたのは、QR コードであった。
では、誤り訂正符号とは何か。ものづくりの場面では、汚れを想定する。QR コードは、
図柄の一部が欠けても、情報の読み取りに支障が出ないよう設計されている。そして、この
メカニズムの実現には、大学のカリキュラムに登場するような高度な数学が裏で走ってい
る。その話を付け加えたい。
まず、ガロア体と呼ばれる0 と1 をベースにした四則演算が行えるものを使っている。
そして、そのガロア体の要素を長方形に並べたものを行列と呼ぶ。誤り訂正符号のアイデア
は情報の水増しであるが、そのための連立一次方程式がデザインされる。行列はこれを簡潔
に表現しており、線形代数と幾何学のアイデアが協働する場面である。
ある種の誤り訂正符号では、3 次方程式の解を求め、誤り訂正される箇所の特定を行って
いる。つまり、汚れの影響による支障を克服するという目的が実現されている。もちろん、
人が紙と鉛筆で解くのではなく、アプリや電子回路があらゆる場合を想定して解を記憶し
てくれているわけであって、情報工学のこういった恩恵に感謝したいところである。