教員コラム 経営学専攻
仕事を見直してみる(経営学 上野 正樹 准教授)
2024年01月15日
仕事を通じて人が学習することをOJT(On the Job Training)と言います。それに対して、仕事の場を離れた教育訓練や研修をOff-JTと呼んだりします。企業における人材育成はOJTがメインで、Off-JTはサブとされてきました。その理由として、OJTは日々の仕事の中でおこなわれ、次の4つのメリットがあるからです(以下、伊丹敬之・加護野忠男(2022)『ゼミナール経営学入門』日本経済新聞社、427-432頁をもとにしている)。
1 業務知識の獲得や判断能力の形成ができる
2 フィードバックが早い(すぐに結果がでる)
3 プレッシャーが高い(成果がうまくなかったとき)
4 組織の慣行や文化などを感じ取ることもできる
一方、Off-JTには次の効果があるとされています。業務知識を伝達できる、人的ネットワークの形成ができる、研修への参加がステイタスになる場合があるなどです。OJTが日々行われているのに対し、短時間・短期間のOff-JTは効果内容においても補助的なものだと言えるでしょう。ただし、Off-JTがよく考えられたプログラムならば次の効果が期待できると言われています(前掲著、431-432頁にもとづく)。
1 仕事の現場で役に立つヒントを得る(種をまく)
2 刺激によって潜在的な能力を顕在化させる(芽が出る)
3 経験を整理する(畑をきれいにする)
ここからはわたくしの意見です。会社の人々のあいだに、種まき、芽吹き、畑の整地を狙った学習への大きなニーズがあると感じています。そこで大学院のプログラムを利用してみることが考えられます。経営学で言えば、たとえば他の業種や企業のさまざまな事例にふれることで次のことが期待できます。
・横展開できそうな取り組みや意思決定を見つける
・未知の業種の慣行や経営行動から刺激を得る
・自身の経験、常識、現場を問い直してみる、相対化してみる
問い直しや相対化は一定期間の経験を積んだ方々として、社会人独特のニーズだと言えるでしょう。最後に、大学側は社会人のニーズに照準を合わせてプログラムや学習ツールを変化させて行くことも考えられます。たとえば学習ツールではインターネット(クラウド教材、リモート併用、学習履歴管理など)の活用が時間制約のある人々に役立ちます。その活用コストが劇的に安いことも強調しておきたいと思います。