教員コラム 経営学専攻
地域開発は人間開発の時代に(経営学 奥田 隆明 教授)
2023年05月01日
日本の国土計画を振り返ると、戦後復興の過程で経験した急速な都市化が地域間の所得格差を生み出し、こうした地域格差を解消するために実に多くの取り組みが実施されてきた。1960年代には高速交通・通信ネットワークの整備計画が策定され、オイルショック以降には田園都市の考え方に基づいた国家構想(田園都市国家構想)も提案された。その後、日本経済の発展とともに再び東京一極集中の問題が深刻化し、首都圏では業務核都市構想や首都機能移転が検討されたが、その実現には至らなかった。さらに、ポストバブルの時代には、地方都市が連携しながら発展しようとする地域連携軸構想が提案され、日本経済が停滞する中で、超電導技術の活用により3大都市圏を一つの巨大都市圏にしようとするスーパーメガリージョン構想も提案されてきた。
ところが、こうした中で新型コロナウィルス感染症が流行し、オンライン技術を活用したワークスタイルやデジタル技術を活用したライフスタイルを経験することになった。また、こうした経験も踏まえて、かつて実現できなかった田園都市国家構想を、デジタル技術を活用して実現しようとする動きも生まれた(デジタル田園都市国家構想)。新しい社会を実現するためには、そこに住む人々が如何なる生活を実現したいかが重要になり、その実現のためにはそれぞれの人が新しいワークスタイルやライフスタイルに挑戦していくことも必要である。さらに、新しい社会を実現するためには、さまざまな技術を活用した新しいビジネスモデルやこれを支える新しい社会制度も必要になる。本研究科では、こうした社会を実現するための具体的な取り組みについて研究を行っている。今、新しい社会の実現のために、研究を通して社会に貢献できる新しい人材が求められている。
「新たなライフスタイルを実現する人中心のモビリティネットワークと生活圏」、
東京都市圏交通計画協議会、2021年3月