教員コラム 経営学専攻
経営学専攻 中尾 陽子 准教授
2021年06月30日
コロナ禍における人間関係とコミュニケーション
2020年から広がり始めた新型コロナウィルスによる影響は、私たちに様々な影響を及ぼし続けています。中でも私が気になっていることは、人と人との接触が極度に制限される中で起きている、人間関係やコミュニケーションの問題です。
幸いにも、通信手段の発達した現代では、SNSやビデオ通話などの多様なデジタルツールで人とつながることができます。そのため、リアルに会うことができなくてもつながりの機会を持てる、特に遠くの人とは会いやすくなった!という声も確かに聞こえてきます。そのため、これらを積極的に活用していくことで、今までにはなかった新しい人と人との関係を作り出していけそうな、楽しいイメージも広がってきます。
一方で、このようなツールは、誰もが自由自在に使えるものではないという事実もあります。また、コミュニケーションの力はいきなりつくものではなく、身近な人との日々の関わりの中で気持ちや考えをやり取りする体験が非常に重要です。先日報道された国立成育医療研究センターのグループによる調査結果は、このような観点に立つと、とてもショッキングなデータだと感じています。このグループは、新型コロナウイルスの流行が子どもたちに及ぼす影響について継続的な調査を行っています。今回の結果では、回答した子どもの50%以上が「新型コロナの影響で先生や大人への話しかけやすさが減った」と答えるなど、悩みを相談しにくい状況が続いている可能性が示唆されたそうです。また、何らかのストレスを感じているとみられる子どもは全体の70%にも上っており、身近な人とでさえ関わることを遠慮し、一人でストレスを抱え込んでいる子どもたちの姿が浮かび上がってきます。私は大学生との関わりを通して、このような状況は、決して子どもたちだけのものではないように感じていますし、私たち大人の状況が人間関係のありように影響していることも間違いありません。
新型コロナウィルスの影響は、まだしばらく続くことでしょう。そんな中で、自分の隣にいる家族・仲間・そして職場で共に働く人に自分の思いを伝える力、相手の思いを聴き、受け止める力を高めるためのコミュニケーショントレーニングは、増々重要になっていくものと考えています。
【参考資料】
○NHK NEWS WEB コロナ禍 子どもは今もストレスが... 気持ちを楽にする方法は?
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210525/k10013050651000.html
○国立研究開発法人 国立国立成育医療研究センター 新型コロナウイルスと子どものストレスについて
https://www.ncchd.go.jp/news/2020/20200410.html