教員コラム 経営学専攻
経営学専攻 薫 祥哲 教授
2020年06月12日
オーガニックコットン生産と環境認証
環境問題を気にかける消費者は、購入商品の品質や価格だけでなく、生産プロセスで発生する環境負荷や労働環境にも配慮した購買行動をとる傾向にあります。近年、環境負荷や労働環境に配慮した商品であることを証明するため、さまざまな環境ラベル(エコラベル)が付けられた商品を見かけます。では、どのような消費者が、どのくらい高くても環境配慮型商品を購入するのでしょうか。このコラムでは、通常コットンとオーガニックコットンのバスタオルに対する支払意志額を調査した結果を簡単に紹介します(*)。
コットン生産は労働集約型であり、通常の綿花栽培には、害虫駆除、雑草管理、殺菌・消毒、そして綿花収穫前に葉を枯らすための落葉剤といった様々な農薬が使われます。一方、オーガニックコットンは、3年間農薬や化学肥料を使用していない土地において、遺伝子組み換え種子を使わずに有機栽培されたコットンであるとされます。毎年のオーガニックコットン生産量は変動しますが、2017~18年の生産集計年度には世界で18万トンが生産されています。これは、世界で流通している全綿花生産量のうち、たったの0.7%です。オーガニックコットンの最大生産国はインド(47%)であり、中国が21%で2位となっています。生産量の上位7ヵ国で全体の97%を占め、米国の3%以外はすべて発展途上国です。
オーガニックコットンについては、栽培から原綿収穫までを対象とする(1)オーガニック農法に関する認証と、綿花からの脱脂・漂白・染色といった紡績からコットン製品製造までの加工プロセスを対象とする(2)テキスタイル認証の2つが存在します。後者の認証では、オーガニックコットン原綿の使用に加えて、その製品加工プロセスにおいても、極力化学染料や薬品の使用を控え、労働環境に配慮し、環境負荷が少なく肌に優しい加工方法を採用すべきとされています。
国際的にも認知度が高く、オーガニック農法とテキスタイル認証の両方を満たす「GOTS認証」ラベルが付いたバスタオル(¥1,200)と、通常コットンのバスタオル(¥1,000)があった場合、どちらを購入するのかを南山大学生を中心とする202人に尋ねました。オーガニックコットンを購入すると回答したのは90人(45%)で、その一番の理由は「肌に優しい」からでした。一方、通常コットンのバスタオルを買うと回答した112人がオーガニックコットンを購入しない理由は、やはり「値段が高い」からでした。オーガニックコットンを買うと回答した人に対して、「最大いくらまで高くても買いますか」と尋ねたところ、平均¥1,312まで支払う意志があることが判明しました。そして、通常コットンの方を買う回答者には「オーガニックコットン価格がいくらであれば買いますか」と尋ねたところ、その平均価格は¥1,015でした。全体の回答値から、通常コットンのバスタオル価格¥1,000に対して、平均¥1,147でオーガニックコットンを購入する意志があることが判明したので、オーガニックコットンに対しては14.7%の価格プレミアムを見いだしていると言えます。
データを統計的に分析したところ、回答者の「オーガニックコットンについての知識」と「化学物質が肌や環境に及ぼす影響を気にする」度合いが、購買行動に影響を与えていることが解りました。すなわち、オーガニックコットンの事を良く知っているか、化学物質の影響を気にする人の方が、オーガニックコットン製品を買う確率が高く、より高い金額を支払ってもよいと考えていることが解りました。これからの商品開発においては、このような消費者選好が反映されることが望まれます。
(*) 詳細については、薫祥哲(2018)「オーガニックコットン生産と環境認証-オーガニックコットン支払意志額調査-」『南山経営研究』第33巻1号を参照してください。