教員コラム 経営学専攻
経営学専攻 白木俊彦 教授
2020年01月06日
「国際会計研究のおもしろさと難しさ」
企業会計は、企業の経営活動を財務諸表として映し出すという重要な役割を担っている。写真のように当該会計事象をピンポイントで写すことが可能であれば現代のようなデジタル社会がさらに発展すれば実行可能な情報にもなり得るであろうが、会計情報の制約として貨幣に係る活動記録であり、その量は膨大で、かつ、取引の質が異なることから、勘定科目とのマッチングも難しい場合が出てくる。そのような作業は、複式簿記によって実践さるため、簿記という技術的な部分から学習が始められる。そのため、会計は簿記であると受けとめる初学者が多いことも理解できる。しかし、簿記を使用して作成される財務諸表の構造は、時代環境に影響を受け、何をどのように映し出すべきなのかという問題は絶えず考えていかなければならない。
それが、一旦決定されると、その基準を学ぶことに専念する学習者が多いことも理解できる。しかし、会計基準全体の基礎となる「概念フレームワーク」が国際財務報告基準審議会から2018年に公表されたが、米国会計基準設定機関の対応は不明である。今後、各国における会計基準設定機関で開発される会計基準が、それをベースに公表されていくのであれば、グローバルな経営活動を行う企業にとっては有益であろう。しかし、世界の会計基準を統一する作業は、米国および国際財務報告基準審議会の協働作業が進まなければ、統一基準の完成には時間がかかるであろう。その原因となる要因の一つに業績のあり方を巡る論点がある。当期純利益とその他包括利益の理解は未だ合意に至っていない。この問題の本質には情報の受け止め方の違いが考えられ、その点に関する合意の可能性についてさらに研究することも、会計の国際化における身近な研究課題である。社会における会社の存在をどのように捉えていくのかという問題も含めた研究は、高度の科学技術が発展する次世代ではなく、すでに現代の課題である。