教員コラム 経営学専攻
経営学専攻 竹澤直哉 教授
2020年03月02日
予測できないことの価値
ファイナンス分野では、世の中の「モノ」の価値を評価し、その価値が時間と共にどのように変化するのかについて研究することがあります。この「モノ」は手に取って見ることができる商品ばかりではなく、保険のような「サービス」も対象となり、その価値を評価することもよくあります。
例えば、電化製品に対するメーカー保証や販売店保証のように、故障に対する保証もこのようなサービスということができるでしょう。こうした「サービス」に価値が存在することはわかったとしても、その価値を定量的に測定することは簡単なことではありません。ファイナンスでは、こうした測定も行うのですが、ここでは、どうして保証サービスに価値があるのかについて考えてみたいと思います。
価値を測定する方法として、サービスに対する対価と考えることが多いのですが、消費者がメーカー保証のようなサービスに対する「対価」を計算することは容易なことではありません。なぜならば、電化製品が故障するかどうかがわからないからです。故障する割合を統計的に推定することはできますが、今、手元にある電化製品が保証期間内に故障するかどうかを予測することはどうでしょうか。一つ一つの電化製品が故障するかどうかを予測しにくいからこそ、もしもの為の保証というサービスが価値を持つことになるのです。
このようにファイナンス分野には、予測できないからこそ、価値のあるサービスが存在します。将来を予測できないことは望ましいことではないかもしれませんが、個人的には、予測できない不安を少しでも取り除くことができるようなサービスを生み出すこともファイナンスの役割の一つではないかと考えながら日々研究を続けています。
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