教員コラム 経営学専攻
経営学専攻 川北眞紀子 教授
2019年04月01日
『新たなビジネス課題を説明する補助線を見つける』
私は教員になる前、広告やマーケティングの企画を生業としていた。その現場で求められる成果は、「明日、お客さんが来てくれるためにどうするのか」という日々の課題に対する短期的な成果であった。その中で、短期的な処方箋だけではどうにもならない部分があることを感じつつ、クライアントの担当者の顔が立つ施策を提案する毎日であった。
その後、ふとしたきっかけで社会人大学院に通うようになり、短期的な対処療法の向こうには、根本的な仕組みを捉える理論があることに気づいた。現場の施策の歪みに気づくための、補助線の役割をもつツールと言えばいいだろうか。そういう道具で説明されると、今まで気づかなかった現状の歪みが見えてくるのだ。実際にその歪みを修正するためには、様々なしがらみが邪魔をするのであるが、それでも、向かうべき先が見えてくる。また、他者を説得するときにも、合理的に説明できるようになる。
これに気づいたときには、様々な補助線を発見するのが楽しくなっていた。そして、自分なりの補助線を勝手に妄想し、楽しんでいた。新たな理論だ!と喜んでいると、大抵はすでに理論化されていることが多く、世の中の知見は本当に奥深いと感じたものである。
今でも、日々、お客さん相手に物を作り、販路開拓をし、販促をしている人々と話をすることが多い。そこでの課題は年々、変化してきている。インターネットの販路を無視できなくなったこと、サブスクリプションモデルへの移行の流れorモノ財のサービス財化、顧客の価値観の変化、ネット上の口コミを利用する顧客のリテラシ-の変化、プラットフォーム型のビジネスモデルの破壊力、コモディティ化への切り札としてのアート、など、上げればきりがない。これらの新たな現象を説明する理論を、生み出すことは楽しいはずである。
大学院は、このような新たな現象の説明に取り組む仲間に会える場なのである。