教員コラム 経営学専攻
経営学専攻 石垣智徳 教授
2019年02月15日
『現場からの学び』
研究上、POS(Point of Sales)データを利用した研究を行うことがある。いわゆる同時購買(スーパーマーケットなどの籠の中にどんな商品が同時に買われるか)などが典型的な研究対象であるが、データの利用にはさまざまなバリエーションがある。そのひとつに価格割引による効果がある。単一商品の価格が下がれば需要が喚起され、購買数が増えるのだが、買い溜めができるような商品の場合、値引きのタイミングを間違えると過去のデータに基づいた予想が外れることがわかっている。
このように過去のデータと理論だけに基づくと思わぬ誤算で良かれと思って行った施策も効果があまり出ない(出ていなかった)ことを目の当たりにすることがしばしばある。
同時購買の話に戻るが、細長いロールパン形状の商品で、味に複数のバリエーション(5種類以上)のあるシリーズを通常価格で販売している場合の売れ行き順位と値引き販売(例:1本通常価格の2割引き、お一人様○本まで)した際の順位に差が出るのだろうか。あるスーパーの方からの話によると確実に順位に差が出るそうである。理由を推察するならば、値引きによる消費喚起と購入数の上限による効果が消費者の選好を変化させたことになる。
すべての店舗に当てはまる理論や法則は存在するが、特定の店舗の戦略に対する効果などを検証するにはデータと現場(販売員から情報を含む)を行ったり来たりすることになる。これまではPOSデータ等単一のデータ分析が多かった私の研究であるが近年ITの発達によって多種多様のデータが入手可能になってきているので、多種多様なデータを活かした分析の必要性を感じるとともに現場の大切さを再認している。