教員コラム 経営学専攻
経営学専攻 赤壁弘康 教授
2018年11月15日
研究者を目指すあなたへの学術的武者修行のすすめ
私はいまでこそ経営学専攻でファイナンスを担当していますが、大学院生時代は理論経済学を研究していました。当時はまだマクロ経済学では珍しかった、ファイナンスで広く応用されていた確率解析を使った経済モデルを学内紀要に論文発表していたことが幸いして、ファイナンス分野で就職できたたようです。我々の院生時代は学位がなくても学内紀要に論文を発表していればどうにか就職できたのですが、いまや時代は大きく変貌し、学位を取得して課程修了することが、研究職に就く最低条件になっています。日本の社会科学系大学院も、やっと本来のあるべき姿になったといえます。
もうひとつ様変わりした点は、社会科学分野でも、査読付き学会誌・学術誌が広く普及したことです。学位取得は研究者としての出発点だといわれます。学生諸君は、指導教員から専門分野に関する指導を受け、専門分野の先生方による学位請求論文の審査に合格する必要があります。この審査手続きは必要ですが、私自身は決して十分ではないと考えます。研究成果には何らかの独創性が求められるため、専門分野で独創性を発揮するには、逆説的ですが専門分野以外の知見・ツールを取込む貪欲さも必要になります。このため、研究が真に独創的なら、専門家は審査委員の先生方ではなく学生本人ということになるからです。
したがって学生諸君は、学内で閉じた学位審査に合格することのみを目標とするのでなく、査読を経て掲載される学術誌に積極的に論文投稿することによって、自身の研究の独創性を世に問うべきです。同じ研究者として先生方と競えるというのは、痛快なことでもあります。レフェリーの評価が厳しくたとえ掲載が拒否されたとしても、コメントに沿って修正することで学位請求論文がより良いものになるので、学位審査に合格するにも有効です。
以上、これが私のいう学術的武者修行です。