教員コラム 経済学専攻
論文は型で書く(経済学 大鐘 雄太 准教授)
2024年05月15日
大学院生になると、本格的な学術論文の執筆が始まります。論文の執筆には通常大きな労力を要しますが、それを軽減するために有効なのが、「型」を使って書くことです。型どおりに書くことには、何をどのような順序で書かなければならないかをその都度考える必要がなくなる、書くべき要素を漏れなくダブりなく書くことができる、読み手にとってもわかりやすく伝わりやすい論文になる、といったメリットがあります。
最近では、論文の書き方について解説している書籍やWebサイトが多数ありますので、最初はそれらを参考にして論文を書いてみるのがよいかもしれません。しかし、これらの媒体に載っているような典型的な型を知っていればそれで十分かというと、必ずしもそうとはいえません。それは一つには、論文の型は研究分野によって異なりうるからです。
たとえば、私はこれまで「起業」をテーマにした論文を経済学と経営学の学術雑誌にそれぞれ掲載してきましたが、査読時に複数のレフェリーから「論文の書き方が根本的に間違っている」というコメントをもらったことがあります。このようなコメントに対応するには、その分野特有の書き方(=型)を知る必要があり、そのための教材として、(幅広い分野の読者を対象としていることが多い)書籍やWebサイトだけでは不十分だと感じました。
上記のような問題への対処法として有効なのが、「自分が読んでわかりやすいと思う論文に共通する要素を帰納的に抽出して、型を自分で作ること」です。これを実践するように論文を読むと、当該分野の論文で必ず書かなければならない要素や、それを論文のどこにどのような順序で書けばよいかがみえてきます。さらに、問いを立てたり先行研究との差別化を図ったりする際の論理の組み立て方もわかってきますので、論文構成の型をまだ確立できていない人は、一度試してみてはいかがでしょうか。