教員コラム 経済学専攻
ペットにとっても暑い夏(経済学 井上 知子 准教授)
2023年09月15日
卒業論文を書いている学生から、「温泉地別の観光客数のデータってどこにありますか?」、「ペットの数のデータは?」など、すぐにはそれがどのように経済学と結びつくのかわからないデータを探してほしいと頼まれることがあります。温泉地別観光客数のデータについては、環境省が出している「環境統計集」に2011年以降の「年度延宿泊利用人員」が県別に掲載されていることを見つけましたが、ペットの数については結局その学生が卒業するまで見つけることができませんでした。
しかし先日、偶然「ペットの数」に近いデータを見つけました。環境省は家庭部門から排出されるCO2の削減を目指す政策策定の基礎資料とするために「家庭部門のCO2排出実態統計調査」という調査を全国規模でおこなっており、結果が公表されています。その中にあったのです。この統計の調査項目は多岐にわたっており、「ペットのためのエアコン(冷房)使用の有無」といったものまであります。そこでは、ペットを飼っているかいないか、また飼っている場合、ペットのためにエアコンを使用するかどうかを尋ねているため、おおよそのペット飼育率がわかります。この統計は回答者の属性が、地方別、 戸建て住宅/集合住宅の別、世帯人数別、世帯主年齢別、世帯年収別など詳しく記されており、結果を眺めているとおもしろいです。現在の日本のCO2排出量の部門別内訳は大雑把にいうと、「産業部門」が1/3、そして、「運輸部門」、「業務その他部門」、「家庭部門」、「その他」がそれぞれ1/6です。全体の1/6を占める家庭部門からのCO2排出を減らすことは重要ですから、このような統計が整備されることは大切ですね。
ちなみに、2021年はペットのためにエアコンを使用する人の割合が最も高かったのは北海道、そして次が東海地方でした。2017年の値と比較すると、九州以外のすべての地方でペットのためにエアコンを使用する人の割合が上がっています。年々暑くなっているのかもしれません。人だって暑いもの、ペットもきっと暑いよね、と思っていたら、猫のためにエアコンをつけたまま出勤している友人の顔がふと頭に浮かびました。
ペットのためのエアコン(冷房)使用の有無 (2021年)
データ出所:環境省「家庭部門のCO2排出実態統計調査」<第3-3表>基本項目(世帯、住宅、機器使用状況等)別-冷房使用状況