教員コラム 経済学専攻
大学院に進学するとは(経済学 寳多 康弘 教授)
2022年06月15日
社会科学系の大学院に進学する人は少なくなっているようです。大学院でもっと学んで研究をするとよさそうな成績優秀な学部生は、なかなか大学院に進学しようとしません。なぜなのでしょうか。
私が大学院への進学を決めたときも、民間企業に就職したり公務員になったりする人と比べると、大学院への進学者は圧倒的に少ないです。ですが、大学院に進学してみると、国内外から人が集まっていてそれなりの数の大学院生がいました。学部時代とは全く異なる仲間に出会えました。
大学院では自らテーマを探したりする独創性が不可欠なので、向き不向きがあります。研究者は生活時間を自由に使えたりして良いと思う人もいますが、四六時中研究のことを考えてしまう(考えないといけないと思ってしまう)ので休まる暇がなく大変だという人もいます。そのためなのか、博士前期課程(2年間)で公務員などになる人も一部いましたが、多くは博士後期課程(3年間)に進んで研究者となるべくさらに精進しました。
自分の設定した研究テーマで自由に研究をしたいと思う人が多いので、そういう人は大学での研究者のポストを狙います。ですが、自分の専攻分野のポストに空きがでないと、就職できません。ここが専門職らしいところで、バスケットボールでいえばあるチームにポイントカードは数名いれば十分でそれ以上はいらないのと同じです。また、日本の大学での就職の多くはテニュア(tenure)なので、ポストにいる人が他の大学に異動するか定年退職しない限り空きはでません。全国にたくさん大学はありますが、自分が就職したいときにタイミングよくポストが空くとは限りません。圧倒的に優秀ならば数少ないポストをゲットできますが、そうではなければポストが多数空くときでないと就職は難しいといえます。
経済学分野のポストの数は、世の中に経済学部が多いことからも分かるように、他の社会科学系分野よりは多いです。といっても、その分、経済学を専攻している大学院生は多いので、競争相手も多いという面もあります。経済学の分野は社会のいろいろな面で役立っているので、民間企業や公的機関のシンクタンクにもポストは多数あり、そういった所に就職する人もいます。
少子化で日本の教育産業は大学も含めて斜陽産業といわれています。現時点で18年後の需要がおよそ予想できる産業だからです。ですが、大学の役割はいつの時代でも重要でなくなることはないといえます。つまり、大学の研究者の職はあり続けます。また、世界共通の経済学のような分野であれば、世界的にも評価されるので、世界で活躍できます。
大学院への進学は、就職先を選ぶくらいの大きな選択です。ですが、今後ますます「分析・協業対話型タスク集約的な仕事」の需要は増えていきます。定型のタスク(業務)は、事務作業なども含めてAI(人工知能)やロボットなどにどんどん置き換わっていくでしょう。産業革命のように、ある意味で人がより楽をできるようになります。そのような世の中では、大学院でより専門的に学び、分析力を高めることが重要となります。ぜひ大学院も進路の一つとして真剣に考えてみてください。
研究者になろうとする人の必読書
マックス・ウェーバー『職業としての学問』