教員コラム 経済学専攻
経済学専攻 太田代 幸雄 教授
2020年07月15日
グローバル経済における混合寡占市場分析
私の近年の研究課題の1つに,「グローバル経済における不完全競争市場と経済政策の効果」がある。この分野も,経済学における他のテーマと同様に日々進歩している状況である。
上記の研究手法は,主に1980年代半ば以降に行われるようになったもので,一般的に「戦略的貿易政策モデル」とも呼ばれている。特に,「寡占産業」と呼ばれている産業に焦点を当てて分析を行うことが多い。現実の例を挙げると,世界における自動車産業,航空機産業,電子機械産業,あるいは金融業など,少数の大企業によって生産シェアの多くが占められているような産業が寡占状態になっていると言えるであろう。
このような状況に加えて,現代の経済における特徴の1つとしては,世界中の多くの産業において市場分権化の動きが進んでいることが挙げられる。この市場分権化の潮流には,中央や地方における規制緩和,あるいは「民営化」等が含まれている。以上のような状況下で,民間企業と公企業との競争,すなわち「混合寡占競争」が発生していると言えるのである。私は,これまで国際経済あるいは地域経済において,公企業民営化政策等に代表される市場分権化政策の決定過程における経済主体(政府,公企業,民間企業)間の戦略的相互依存関係を明らかにし,分権化政策の資源配分への効果,貿易・産業政策のような他の政策と分権化政策との相関関係についての検討を行ってきた。現在,共同研究者との間で公企業が存在する経済において外国企業が参入してきた場合の民営化政策等の効果を研究しているところである。また,大学院博士後期課程の学生とともに,具体的な産業として銀行産業を取り上げ,この市場における寡占理論および経済政策の効果について研究を始めたところである。この研究においても,将来的には近年のグローバル化に関する要因を導入し,より現実的なモデルの分析を行いたいと考えている。