教員コラム 経済学専攻
経済学専攻 焼田党 教授
2019年09月16日
「経済学者の仕事」
最近の著書『良き社会のための経済学』(2018年、日本経済新聞社)で、ノーベル賞受賞者であるJティロール教授が「経済学者の仕事」に第4章を充てている(村井章子訳)。中に書かれているのと同じことをよく学生に訊かれる。「学生を教えていないとき何をしているのか」と。もう数十年前に大学教員になるとき、当時の指導教官から、大学教員の仕事は三つ、教育、研究、そして校務と教えてもらった。これまで、それぞれ三つを均等にこなしてきたとはいえないが、それなりに三つともやってきたとは考えている。つまり、学生の問いには、残りの二つ、研究と校務が残り時間の仕事であると応えることになる。最近は、他に社会貢献というのが別に言われることもある。
もう引退が秒読み段階に入っているので、これまでの教員生活を振り返ると、教育は教員の最も重要な義務であるので、かなりの労力を傾けてこざるを得なかった。ただ、現在でも、聴講してくれた学生に満足してもらったかと問われるといささか心許ない。校務については、特に意図的に回避したという意識はないが、あまり管理職には向かなかったように思う。他の皆さんの意見を調整しながら組織としての結論を出すという作業が上手くできない。独断に近い(というより独断だった)とかつての同僚から言われている。最後に研究であるが、これは「個人タクシー」営業に似た側面があると、やはり指導してもらった先生から言われていたので、気の向くままにはやれてきたように思う(成果はともかくとして)。
本学では年齢を理由に校務をなくしてもらっているので、今は教育と研究に時間を割いている。教育に関する評価は短期的には難しいとは思うが、「試験で終わり」にならないような講義を目指して準備を続けることになりそうである。研究も評価は難しい。経済学では学術雑誌のランキングが様々つけられており、高いランクの雑誌に論文が掲載されること、そして引用される回数が多いこと(とランクの高い雑誌論文に引用されること)が学者としての評価とされていると思う。基準とおりに、あと数本を目指そうと考えている。
最後に、教育には、経済学を発展させてくれる人を育てる仕事がある。これは、大学・学部の空気があって個人的には貢献が難しい。しかし、(本学に関わらず)より多くの学生が大学院に進み研究を続けたいと思ってくれるようになってくれればよいと考えている。