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第2回 教員リレーエッセイ 太田 達也先生
2022年10月05日
ウィーンでの国際学会とオーバーアマガウの受難劇
今年の8月に、オーストリアのウィーンで開催された「国際ドイツ語教師学会」(IDT: Internationale Tagung der Deutschlehrerinnen und Deutschlehrer)という世界中のドイツ語教員が集まる国際学会に参加しました。
ウィーンに到着した翌日にはまず、この学会に合わせて開催された「国際ドイツ語教師連盟」(IDV: Internationaler Deutschlehrerinnen- und Deutschlehrerverband)の総会に日本の代表として参加しました。世界中のドイツ語教員連盟の代表者とはもちろんドイツ語で話すわけですが、ドイツ語で世界のいろいろな国の人々と交流できるのは、いつものことながらとても楽しく感じます。ドイツ語が世界の人と話す共通語になるのですから。
学会では、ドイツ学術交流会(DAAD)の招待を受け、DAAD企画によるシンポジウムにパネリストとして登壇しました。ドイツ、ウクライナ、ポーランドから招待された登壇者たちとともに、「外国におけるGermanistik(独語独文学)とドイツ語教員養成」をテーマにした議論に参加し、ここでも各国のドイツ語教育研究者たちとの情報交換のためのよい機会を得ることができました。どこの国にも同じような悩みや問題があるようです。
こうした国際学会では、ドイツ語教育関連の出版社等がたくさん出店して展示販売しているため、日本では見られないようなさまざまな教材等を実際に手にすることができるのもまた楽しいところです。学会ではまた、ついこの3月まで太田ゼミ生であった大学院生のSさんがドイツ語で研究発表を行いました。学会で発表するには査読(事前審査)を通る必要があるわけですが、南山のドイツ学科生時代に出していた申請が問題なく受理され、堂々と発表する姿を見られたのは大変うれしいことでした。おそらく最年少の発表者だったのではないかと思います。
学会場でも街中でもびっくりしたのは、「マスクをしていると目立つくらい」だったことです。先述の国際会議でもマスクをしている人はほとんどおらず、立食パーティーでもみんなマスクなしで食べながらしゃべるしゃべる......。そのあたり、日本とは大違いです。
学会終了後は、ミュンヘン大学の図書館で資料収集をした後、南ドイツのオーバーアマガウ(Oberammergau)に受難劇(Passionsspiel)を見に行きました。これは、ペストが大流行した1633年に「もし蔓延が収まったら感謝のしるしとして10年ごとに受難劇を上演する」と約束したことに端を発すると言われている、とても古い歴史を持つ宗教劇です。幸い被害が少なかったオーバーアマガウでは、これを神の御加護の証だとして、1634年以来じつに380年以上もの間、10年に1回、受難劇を上演し続けています。予定されていた2020年はコロナウイルス感染拡大のために上演が2年延期となり、今年2022年にようやく上演されました。第1部が2時間半、夕食を挟み、第2部も2時間半、計5時間という長大な劇ですが、ドイツ語で演じられるキリストの受難劇は、ほぼ最前列で見ていたこともあってとても迫力があり、また訴えかけるものがありました。オーバーアマガウはとても小さな村ですが、木像彫刻のお店がとてもたくさんあり、私も美しいマリア像と十字架を入手し、ひっそりと部屋に飾っています。