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第1回 教員リレーエッセイ 畑野 小百合先生
2022年09月01日
国際音楽学会第21回大会について
今回は、2022年8月22日から26日にかけてギリシャのアテネで開催された、国際音楽学会(International Musicological Society)の第21回大会についてご報告します。1927年に設立されたこの学会は、スイスのバーゼルを本拠地とし、5年に一度このような世界規模の大会を行っています。私は、2017年の東京大会に続き、今回のアテネ大会にも参加し、研究発表を行いました。
【大会のメイン会場となったアテネ大学のキャンパス】
音楽学の世界におけるこのイヴェントの特筆すべき特徴は、その規模の大きさにあります。今回も数多くの音楽学者たちが世界各地から集い、自身の研究について発表したり、ディスカッションを行ったり、ともに音楽に耳を傾けたりしました。発表者の人数が多いということは、扱われるテーマも多様になります。5日間にわたって10を超えるセッションが同時に開催されるスケジュールが組まれるため、どの教室に足を運ぶかに頭を悩ませることになりますが、それはこのような大規模かつ充実した大会において経験し得る贅沢な悩みなのです。
【研究発表の様子】
今回の大会では、3つの大きな喜びを経験しました。1つ目は、アメリカやブラジルやフランスなど、さまざまな場所で研究活動を行っている関心の近い研究者たちに自分の研究を知ってもらい、情報を交換したことで、大きな刺激と今後の協働につながる交流が得られたことです。2つ目は、ベルリン芸術大学の博士課程で共に学んだ友人たちと再会し、時間を共にし、彼らが研究者として大いに活躍している様子を知ることができたことです。3つ目は、これまで自分の研究のための調査などでは訪れる機会がなかったアテネを訪問し、この地の歴史や文化、芸術について理解を深めることができたことです。ここで得られたネットワークや経験を、今後の研究や教育活動に活かしていきたいと強く思いました。
【学会プログラムの演奏会の1つが開催されたミトロポレオス大聖堂】
新型コロナウイルスのパンデミックを経て、オンラインで開催されるイヴェントの利便性も感じてきましたが、今回久しぶりに大きな国際大会に現地で参加して、多様な人々が集まるこのような大規模な会合にこそ、対面での開催に意味があるのだと感じました。今回実感したことは、研究発表の場とは、多様な経験や関心をもつ研究者の「視線」が交差し合う場であるということです。皆が発言者の方向に物理的に目と耳を傾け、それに対してさまざまな視点からの見解が飛び交う空間には、血の通った交流と世界の立体性を感じさせてくれる刺激があり、やはりフラットなパソコン画面を通して構築される関係とは違ったものが成立していたように思います。これからの学会活動は、イヴェントの目的と性質に応じて、対面とオンラインの形式を使い分けて実施されていくことでしょう。
私もまた国際的な場で議論ができる機会を楽しみに、日々の研究を積み重ねていきたいと思います。
【パルテノン神殿】