短期大学部紹介 星の王子さま
No.23 肝心なことは目には見えない、しかし・・
2013年10月25日
別れる前に、キツネは王子に秘密を教えよう、と言います。特別なことではない、と前置きしながら「心で見なくちゃものごとはよく見えないってことさ。肝心なことは目には見えないんだよ」。この文章の後半は『星の王子さま』を読んだことのない人でも知っている有名なフレーズです。しかし、心で見ると見える、という前半の知恵も大切ですね。「肝心なことは目には見えない」と王子は忘れないように繰り返します。君のバラが大切なかけがえのないものになったのは、君がバラのために「暇つぶし」したからだ、とも教えてくれます。品があまり良いと思えない訳語に大切なメッセージが込められてくるのは、「飼いならす」の場合と同じですね。時間を有効に使う、というより「時間を失う」というニュアンス。前者が自分のためであるとするなら、後者は他の人のため、あるいは、自分のことを忘れて、という内容的な違いがあるようですね。
そして、絆を結んだ者同士にはお互いに「誠実」さが要求される、という真理-人間たちが忘れてしまったこの真理-を君は忘れていけないよ、と最後の励ましの言葉をキツネは王子に贈ります。
市瀬英昭