「でも、どうしたらいいの？」と尋ねる王子に、キツネは「＜しんぼう＞が大事だよ」と答えます。忍耐の必要性。別様に言えば、時間をかけること、時間がかかることを受け入れること。確かに、友達を店で買うことは出来ません。友達はインスタントフードではない。ここでは、絆をお互いに創り上げていくプロセスの大切さが言われているようですね。さらに、キツネはもう一つの条件として「＜きまり＞がいるんだよ」、とも教えてくれます。原語は儀式という単語です（rite）。ならわしとも習慣とも訳せる言葉ですが、「約束事」という訳はいかがでしょうか。何ともない普通の日、普通の時間が別の新しい意味を持ち始めるための「約束事」。

私たちの日常は、そのような約束事、きまりがあってこそ、潤いのあるものになるのではないでしょうか。時間をかけて忍耐をして約束事をお互いに守ることを通して、絆が生まれ深まっていくのですよ、と言われているようですね。

市瀬英昭