短期大学部紹介 星の王子さま
No.21 <飼いならす>って何
2013年06月06日
キツネから声をかけられたのは、王子が悲しくて泣き伏しているその時でした。「こんにちは」。「とても悲しいから一緒に遊んでよ」との王子の誘いに、キツネは、自分はまだ君に「飼いならされて」いないから遊べない、と答えます。この奇妙は言葉(アプリプワゼ)はこの章だけで15回出てくるキーワードです。「手なずける」とも訳せるこの一見、上から目線の単語の意味がよくわからない王子は繰り返し尋ねます。「<飼いならす>って何のこと」。ようやくキツネは答えます。「<仲よくなる>ということさ」(直訳「絆を創り上げで」)。そして、続けます。飼いならし、飼いならされたら、お互いに「かけがえのないものになるんだよ」。
そして、誰かが自分にとってかけがえのないものになると、周りのものが全く違って見えてくる。その人の足音が聞こえるだけで嬉しくなる。パンを食べないキツネには「麦畑」は何の意味もありませんでしたが、王子と知り合いになることで、素晴らしいものに変わります。「金色の麦畑」が王子の「金色の髪」を連想させるからです。その上、麦畑の上を吹く風の音さえ愛おしくなる、と言います。まさに「世界の変容」。
では、飼いならす、飼いならされるためには、どうすればいいのでしょうか。
市瀬英昭