短期大学部紹介 星の王子さま
No.14 本当の「まじめさ」とは
2012年06月11日
四番目の星の「まじめな実業屋」は、王子が訪問して声をかけても、忙しく数字の計算をしていて顔も上げません。「まじめな」(セリウー)という形容詞はこの章だけで7回も出てきます。これは、はじめの「献辞」にすでに出ていましたね(「まじめな」理由がある)。でも、同じ言葉も誰がどのように使うかでずいぶんと違った意味になります。
「私はまじめな人間だ」と何回も繰り返すこの実業屋の「まじめ」は「夢」を見る暇もなく、人と関わる余裕もなく働くまじめさです。計算、所有、管理ということに没頭しています。彼については、7章の回想の個所で「花の匂いを嗅いだことも、星を見つめことも、人を愛したことも一度もない」人と、言われています。
確かに、数字や書類の背後には「人間」がいます。しかし、人間は数字ではありません。また「人間は寝ている時だけでなく目覚めている時にも夢を見ることができる」という時の「夢」は単なる夢想ではなく「まじめな希望」を指しています。「何を持って生きるかではなく、どこへ向かって生きるか」を大切にしたいですね。
市瀬英昭