短期大学部紹介 星の王子さま
No.3 出会いは突然に、でも、ゆっくりと
2011年06月15日
「お願いします。ヒツジの絵をかいて!」
飛行機が不時着し砂漠で孤独の中で寝ているパイロットに、声が話しかけます。突然表れたこの男の子は、理由を説明せず、でも、大事そうにゆっくりと繰り返します。「お願い。ヒツジの絵を書いて」。砂漠の真ん中で命も危ない中で絵を書くなんて、とは思いながら、彼は以前に大人たちに見せた「象を飲み込んだ大蛇」の絵の外側を書きました。すると、この子はすぐさま中身を見抜き、象や大蛇ではなくてヒツジの絵が欲しいのだ、と言います。驚きながらも求められるままに、彼はいろいろなヒツジを書きますが、「これはダメ」、「あれもダメ」と言われます。
飛行機の修理でそれどころではないパイロットは付き合いきれないと思ったのでしょうか、一つの箱を書きなぐってそれを男の子に見せました。「その中に君の欲しいヒツジがいるよ」。・・・男の子の顔がパアーと輝きます。「ぼく、こんなのが欲しかったんだ。このヒツジたくさん草食べる?」。このようにして二人は知り合いになりました。
普通は、手短な自己紹介や名刺のやり取りという情報交換から、知り合うことは始まりますが、ここでは、この子の名前も素状もお願いの理由もわからないまま話が進んでいます。でも、その中で中身を見抜くこの子どもへの呼び方が変わっていきます。はじめは「不思議な男の子」、次に「私の坊や」「私の友人」「私の幼い審査員」そして、最後に「小さな王子」。この小さな変化も出会いのプロセスを示しているようですね。
市瀬英昭