短期大学部紹介 星の王子さま
No.30 すると、すべてが違って見えるでしょう(最終回)
2015年03月30日
最終章27章です。王子と一緒に過ごし、いろんなことを語り合った一週間を思い出しながら、パイロットは私たちに語りかけます。親身になって話をする相手がなく、ひとりきりで暮らしてきたパイロットは、星の王子と出会うことで徐々に変わっていきました。六年かかって言葉になったその体験を私たちに伝えます。この本が、もともと子どもたちへのクリスマスプレゼントとして依頼され書かれたものだとしたら、新約聖書のイエスのメッセージと重なる部分があってもおかしくありませんね。「あの王子さまを<愛している>あなたがたと、ぼくにとっては・・・この世界にあるものが、なにもかも、ちがってしまうのです」。ここに大きな「ミステール」(神秘)がある。神秘という言葉は、あまりに身近過ぎて忘れている大切なこと、と意訳できます。絆の大切さとそれが作られるプロセスも私たちは学びました。この絆は同著者の『城砦』では、複数形で書かれています。生きていくときに必要な「絆たち」。私たちを、世界を、ひとつにすることできる「絆の網」を可能にするものは何でしょうか。
最後に、『星の王子さま』とは全く異なるトーンで書かれた同著者の『人間の土地』から、すべての人が味わうべきであろうと思われる一文を記して、この連載を終わりたいと思います。長い間ご愛読ありがとうございました。
「人間であるとは、まさに、責任を自覚するということである。それは、自分は関与していないと思われた悲惨を前にして、恥の何たるかを認識することである」
市瀬英昭