短期大学部紹介 星の王子さま
No.26 あなたが本当にほしいものは何?
2014年04月15日
25章は、最も長い章である26章と共に、この本のクライマックスをなしていると言えます。ここには、二人で一緒に探し、やっと見つけた井戸からくみ上げた水をパイロットが王子に飲ませる場面が描かれます。のどが渇くはずのない王子が、「僕、その水がほしいな。飲ましてくれない?」とパイロットに頼みます。その時、パイロットは「王子さまが何をさがしていたのか、わかりました!」。この(!)は、大事なエクスクラメーションマークです。どんな水でもいいわけではない。「その」水が飲みたい、と。そうか、王子は、私が苦労し汲み上げた「その水」を必要としていたのか。それは、王子にとって、単なる水ではなくて、お祝いのごちそうになりました。その場の何とも言えない暖かさ、雰囲気が二人にとって、かけがえのないものとなりました。そしてその体験は決してなくなることはありません。
この章では、探す-見つかる、という言葉が繰り返されます。「探しているものは、たった一つのバラのなかにだって、少しの水のなかにだって、見つかるはずなのに」。だけど「心で探し求めなければいけないんだ」。王子は、こう言って、パイロットに飛行機の修理に戻るように促します。別れの予感がしますね。
市瀬英昭