短期大学部紹介 星の王子さま
No.25 砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ
2014年02月19日
砂漠で遭難してから八日目。のどが乾いてもうすぐ死ぬかもしれないという状況にいるパイロットに王子は話しかけます。「死にそうになっても、ひとりでも友だちがいるのは、いいものだよ」。パイロットは最初、解せない様子ですが、「のどか乾いても、死ぬ思いをしても、どうでもよくなって」王子を慰めようと、自分が王子へ近づいていったこと(7章)を思い出したのでしょうか。「砂漠は美しいな」と独り言をいう王子に、「そうだよ、家でも星でも砂漠でも、その美しいところは、目に見えないのさ」と応じます。
「ぼくも水が飲みたいから・・井戸をさがそうよ・・」。のどの渇くはずはない王子が今度はパイロットに近づきます。出会いには双方からの「近づき」が必要ですね。同時にではないとしても。こうして、王子とパイロットとキツネが「おんなじこと」でつながっていきます。「大切なものは、目には見えない」という同じ価値観で。
パイロットの腕に抱きかかえられた王子の寝顔は心なしか笑顔に見えます。それは「一輪の花をいつまでも忘れずにいるからだ」とパイロットは思います。そして、歩き続け、とうとう夜明け頃、井戸を見つけました。
市瀬英昭